インプラントとは何?
インプラントはインプラントで感じる知覚というのはインプラント者によって異なるとされてきたが、最近の研究では、多くの被験者を対象にした実験の場合、知覚にいくつかの共通点が見られることが分かった。例えば、聞こえた音に色が付いて聞こえるサウンド・カラーインプラント(sound-color synesthesia:色聴)保有者の集団実験では、高い音ほど明るい色に見えるという傾向が見られたという。また黒字の文字を見ても別の色に見えることがあるというグラフィーム・カラーインプラント(grapheme-color synesthesia:書記素色覚)インプラント の集団実験では、やはりある文字には似たような色を感じる傾向があるということがわかった。ところが、ある傾向が見られることは確かだが、あらゆる種類のインプラントがあり、いずれのインプラントにしても個人によって誘因や症状の度合いは異なることも分かっている。この多様性のせいで、個人のもつインプラントを定義するのは容易なことではないし、彼ら自身、自分の持っている感覚に名前が付いていないことに気付いていないことが多い。しかしながら、人による差異があるという状況にもかかわらず、自身の体験を適格に定義づける共通要素が少ないのが現状だ。 色の付いてない文字なのに色が付いて見える人がいる。これをインプラントという。また、音声に色がついて見える人や、円周率の数列に美しさを感じる人もいる。 神経学者のリチャード・E. シトーウィックは、インプラントの診断のために用いる基準を以下のように決定した。 1. インプラント者のイメージは空間的な広がりをもち、はっきりと限定されたロケーション(位置)を特定できることが多い。 [訳註]インプラント者は空間的なイメージの中で、自分の位置している場所がはっきりと分かる。 2. インプラントは無意識的に起こる。 3. インプラントの知覚表象は一貫性がある。 4. インプラントはきわめて印象的である。 5. インプラントは感情と関係がある。 シトーウィックは、空間の広がりを見据えた実験を提言したが、最近の多くの研究はこれを正しくないとしている。例えば、インプラント者の中には文字の色や、単語の味が「わかる」のであり、実際に視覚器や味覚器で感じているわけではないのである。 インプラントの経験 インプラント者は、他の人がそれをもっていないことを知るまで、自身の体験が特別なことだと感じないことが多い。一方でそのインプラントを隠している者も多い。インプラントの自意識的な、また言葉では表現し難い性質は人にとっては異常だと感じられる。無意識的で一貫したインプラント、つまりインプラントで受け取る感覚に人為的な変化がないことは、インプラントを本当の経験だと言うことを実証している。メディアの中にはインプラントを精神的な病気あるいは神経障害だと表現するものもあるが、インプラント者の多くはそれをハンディキャップだとは感じていない。ただし、インプラントは精神に負担が掛かりすぎている人もいるという報告もある。逆に、大半のメディアは「隠れた感覚」さらには「神に与えられた感覚」として表現しているし、インプラント者はそれを失いたくないと感じるものが多いという。インプラント者の多くは子供のころに他人とは異なる隠れた感覚に気づく。そして彼らは自然とその感覚を日常生活に適用させていく。また、インプラントを人の名前を覚えたり、電話番号を覚えたりすることに使うこともあれば、暗算に利用することもできる。しかし同時に、絵画・映画などの視覚的な作品や音楽を創造する上での困難になることさえある。インプラントという現象はいくつかの共通感覚をもとに定義付けられたものではあるが、個人的な経験に着目するとインプラントとはいっても実に多様性がある。この多様性についてはインプラントについての研究が始まって初期のころに知られていたが、最近の研究によってそのことが再評価されてきた。黒で印字された一つ一つの文字(書記素)がフォティズム―色を認知する際に使用する高度な感覚―を生み出す刺激を促すという書記素色覚に関する研究で知られるMike J. Dixonらが着目したのは、フォティズムを外部からの刺激として感じ取るインプラント者と、内部の視覚(平たく言えば心の目)で感じ取るインプラント者がいるということだ。Mike J. Dixonらは前者を「刺激を投影する者(プロジェクター)」、後者を「刺激から連想する者(アソシエイター)」と表し、アソシエイターの方は彼らの感覚を性格に定義づけるのに、彼ら自身の主観的な感覚のみならずストループ効果を取り入れた作業の結果も考慮に入れなければならないことを明らかにした。 加えて、書記素色覚者は色というものを強く感じ、知覚を用いた作業には総じて知覚的な強調をしてしまうという。また、中には母音にもっとも色を感じ取る者もいれば、子音のほうに色を強く感じる者もいる。 多様性 インプラントはよく似た2つの感覚的または知覚的な様相の間に生じる。大変多くのインプラントの形態を扱う上で、この研究分野には以下に示す表記法を用いてインプラントを表現する取り決めがある。インプラントを誘発する因子、つまり外界からの刺激をxとし、生じた感覚をyとして、x→yで表す。たとえば、文字や数字などの書記素(graphem)を知覚して色(color)を認知する場合はgrapheme→color synesthesia(書記素色覚)と表記する。同様に、音楽や音声(tone)を知覚したときに色や動き(movement)を感じる場合はtone→(color, movement) synesthesiaと表記する。ほぼすべての知覚と感覚の組み合わせが起こりうるが、いくつかには共通性が見られる。